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2.162017
ビラノア錠発売記念講演会 2017-02-16
本日、ビラノア錠発売を記念しての講演会に参加してきました。ビラノア錠とは「先日の院内勉強会でも取り上げた新しい抗アレルギー剤」のことです。
演題 「発汗異常の病態と治療:多汗症から無汗症まで」
演者 大阪大学大学院 医学系研究科 皮膚科学講座 准教授 室田浩之先生
私自身、多汗症(汗をかき過ぎてしまう病気)の患者様からよく相談を受けます。また、汗は皮膚炎の原因、及び悪化因子として日常診療に深く関わってきます。そのような訳で、汗については興味を持っていますし、より深く学びたいと考え参加してきた次第です。特に印象深かったものをシェアしたいと思います。
■多汗症
当院で行なっていない「水道水イオントフォレーシス治療」を紹介していました。使用機器は「Vectronics IONTOPHORESIS IP-30」です。対象は手掌、足底になります。定期的に通院する必要はありますが、有効率は高いようです。
イオントフォレーシスの多汗症に対する作用メカニズムは、「イオンチャンネルのブロック」です。機器によって水道水が電気分解され、水素イオンが作られます。その水素イオンが汗腺分泌部にある汗腺細胞のイオンチャンネルをブロックし、細胞内←→外のナトリウムイオンの移動が妨げられます。その結果、汗の生成が抑制されることになります。
以前、当院では「ドライオニック」という個人で購入可能(米国より輸入)なイオントフォレーシス機器を、希望者に無料貸与して試用していただいていた時期があります。しかし実際に自宅で定期的に取り組むことは難しいようで、なかなか思うような結果が出ず中止した経緯があります。
イオントフォレーシスは健康保険が適応される治療方法です。定期的な通院というハードルはありますが、「院内で確実に効果の出る医療機器での治療」の方がモチベーションは高く維持できるのかもしれませんね。導入も含め、今後検討して行きたいと思います。
当院での多汗症治療については、過去記事をご覧ください。
【解説】当院における多汗症・腋臭症(ワキガ)治療のまとめ
■代償性多汗症
多汗症治療のために交換神経遮断術を受けたら、患部以外の皮膚が多汗になってしまう副作用「代償性発汗」は有名です。それと同じような現象が脊椎管狭窄症で生じた例(上半身多汗、下半身無汗)を紹介されていました。非常に興味深いです。
■フライ症候群
耳下腺や頚部への手術・外傷の後、食事の際に病的な汗をかいてしまう状態です。手術・外傷によって耳下腺への神経が傷つけられ、その神経が再生する際に耳下腺ではなく汗腺へ接続された結果、唾液が分泌される状況で病的な汗が出てしまうことになります。
■皮膚炎における汗の真皮内漏出
こちらは大阪大学における実験データを元に解説されていました。1つは「dermcidinの免疫染色結果」です。dermcidinは汗に含まれる抗菌ペプチドの一種です。正常皮膚組織では汗腺組織にのみ綺麗に染色され、それらの局在は限定的です。皮膚炎から採取した組織でdermcidinの染色を行うと、真皮内のほとんどの部分において染色されていました。この所見は何らかの原因で汗成分が真皮内に分布していることを示しています。
もう1つは「汗管内から真皮への漏出部位の特定結果」です。これは実験として行なったものですが、皮膚表面から汗管内に逆流させる液体を赤色、汗管を構成する細胞を青色、細胞間のタイトジャンクション(接合部)を緑色で染色し、それらの変化を継時的に撮影し動画のように示されていました。
正常皮膚では青色(汗管を構成する細胞)が規則的に配列して形成された間隙を、赤色(皮膚表面から汗管内に逆流させる液体)が綺麗に流れていきます。これは汗管内のみに液体が逆流していることを示しています。
皮膚炎から採取した組織では、赤色が緑色部分(細胞間のタイトジャンクション)から外部に漏れ出しているのが、継時的にはっきりと見てとれます。この結果より、皮膚炎を生じている皮膚組織においては、汗管を構成している細胞同士の接合部に異常をきたし、それらの部位より汗管内腔の内容物が真皮に漏出していることが示唆されていました。
演者はこの実験において想定外だったことは、「いとも簡単に汗管内を液体が逆流したことだった」と述べていました。確かにその通りですね。
■アトピー性皮膚炎(AD)と汗について
AD患者における「角質内水分量の低下」、「乏汗状態」、「アセチルコリン(交感神経から発汗を刺激する物質)への反応の低下」、「ヒスタミンによるアセチルコリン誘導性発汗の抑制と抗ヒスタミン薬によるそれらの改善」、「汗の真皮内漏出(前述)」、「シャワー浴の効果」など。
本日は大変勉強になりました。室田先生ありがとうございました。
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