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7.22017
尋常性乾癬治療薬の2剤同時記念講演会
本日、マルホ(株)さんによる尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)治療薬の記念講演会が、港区のホテルで開催されました。
2製剤まとめての講演会で、1つは7月11日に発売予定の「コムクロシャンプー」、もう1つは発売から1年が経過した「マーデュオックス軟膏」です。「コムクロシャンプー」は近日中に詳細がわかる予定ですので、後日記事として書かせていただきます。
「マーデュオックス軟膏」は尋常性乾癬の治療薬としては最も新しい外用剤です。
また、マーデュオックス軟膏は「配合剤」といって、2つの主成分が1つのチューブ内に入っている薬剤です。ちなみに、主成分が1種類の薬剤は「単剤」と呼ばれます。
マーデュオックス軟膏は「ステロイド」、及び「ビタミンD3」という2つの主成分が入った配合剤です。配合剤を作るのは容易ではなく、「有効成分の安定性」と「各単剤と類似した経皮吸収性」を有していなければ外用剤として機能しません。従って、こういった開発や調整は製薬会社レベルでないと行うことができません。
「A薬とB薬の2つを別々に塗るのは大変だから、両者を混ぜて軟膏壺に入れよう。それを塗れば一緒でしょ!」という単純な発想ではいけないのです。「混ぜもの」が大好きな皮膚科医もいますが、上記のような理由から、当院では「混合調剤(単剤として製品化された外用剤2種類以上を医療機関・薬局レベルで混ぜ合わせる行為)」を極力行わないようにしています。
昨年のマーデュオックス軟膏新発売記念講演会にて東京逓信病院薬剤部の大谷道輝先生は、「ステロイド+ビタミンD3の混合調剤」の問題点について、以下のように講演されています。
混合調剤された処方薬では、様々な要因により有効性に影響が及ぶ可能性がある。
・pHの影響による有効成分の含量低下(ステロイドは酸性下で安定、ビタミンD3はアルカリ性下で安定と正反対)
・軟膏壺保存中の光安定性の問題(主にビタミンD3)
・希釈による濃度変化に伴う効果減弱(主にビタミンD3)
現在では「ステロイド+ビタミンD3配合剤」が2種類(マーデュオックス軟膏、ドボベット軟膏)製剤化されており、これは皮膚科医にとって非常にありがたいことです。
まず1つ目として、混合調剤ではなく製薬会社レベルでの配合のため、「有効成分の安定性」と「各単剤と類似した経皮吸収性」が保たれている点です。
2つ目としては、尋常性乾癬に対して「ステロイド+ビタミンD3配合剤は非常によく効く」という点です。配合されているステロイドのランクは「very strongクラス」ですが、実際の皮疹の改善度合いで評価した場合、ステロイドのランク的には「strongestクラス並の効果」が得られます。
3つ目としては、「ステロイド+ビタミンD3配合剤」から「ビタミンD3単剤」への移行がスムースに行える点です。
「ビタミンD3単剤」では尋常性乾癬の皮疹を抑える効果が発揮されるまでに数週間かかります。ですから、「ステロイド単剤→ビタミンD3単剤」へのスイッチの場合、上手に移行できない(=皮疹が再燃してしまう)と患者様がシビレを切らしてステロイド外用剤に戻ってしまうことがあります。
「ステロイド+ビタミンD3配合剤」から「ビタミンD3単剤」への移行では、上記のような問題がほとんど起こりませんから、医師としても大変安心感があります。
このように優れた外用剤をこれからも積極的に活用し、当院における尋常性乾癬の治療を充実させていきたいと思います。
【追記(2021-03-07)】
2021年2月24日より「頭部の湿疹・皮膚炎」に対し、コムクロシャンプーが保険適応追加となりました。
詳細は「コムクロシャンプーが「頭部の湿疹・皮膚炎」に対し処方可能となりました!」をご覧ください。
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