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9.52017
アメナリーフ錠 院内勉強会
本日は昼休みを利用してマルホ(株)さんによる「新規抗ヘルペスウイルス剤 アメナリーフ錠(アメナビル錠) 院内勉強会」を開催しました。
アメナリーフ錠は9年ぶりに発売された「抗ヘルペスウイルス内服薬」です。帯状疱疹に対して保険適用となっています。歴史的にはゾビラックス錠→バルトレックス錠→ファムビル錠→アメナリーフ錠となります。ゾビラックス錠だけで診療していた時代が懐かしいです。
アメナリーフ錠の作用機序は以下の通りです。
アメナリーフ錠は水痘・帯状疱疹ウィルス複製の初期段階である二本鎖DNAの開裂、及びRNAプライマーの合成に必要なヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を直接阻害することで、ウイルスの増殖を抑制する。
非常に難しい説明ですよね。分かりやすくまとめますと「既存の抗ウイルス剤よりもウィルス複製の初期段階をブロックする」という作用です。そうなると、「これまでの薬剤よりもより臨床効果が高いのでは?」と期待しますよね。
ところがアメナリーフ錠の第III相臨床試験は「非劣性試験」となっています。非劣性試験とは「比較する薬剤よりも臨床的に劣っていないことを示す試験」です。今回の試験における比較薬剤は「バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス錠)」です。つまり、「アメナリーフ錠はバルトレックス錠に比べて臨床的効果が劣っていない(=同等の効果が期待できる)」ということが示されたことになります。
アメナリーフ錠の臨床試験は「優越性試験(比較薬剤に対し臨床的な効果が優っていることを示す試験)」となはりませんでしたが、本薬剤には既存薬にはない優れた特性があります。それは「腎機能障害のある方への薬剤減量という使用上の注意がない」という点です。
既存薬3種類の添付文書には「腎機能障害のある方へ使用する場合は、腎機能に応じて薬剤を減量しなさい」という注意事項が記載されています。これはどの薬剤も「主な排泄経路が尿中(腎臓経由)のため、腎機能障害のある方は体外に排泄されにくく、高い血中濃度が持続しやすくなる。その結果、健常人に比べ副作用の発現率が高くなる」からです。
アメナリーフ錠の排泄経路は「主に糞便中(肝臓経由)」となるため、腎機能障害のある方への薬剤減量という使用上の注意がない薬剤となっています。ちなみにですが、アメナリーフ錠は肝機能障害のある方であっても薬剤減量の必要性はありません。
このようにアメナリーフ錠は既存薬にはない優れた特性を有する薬剤です。元々腎機能障害のある方に生じた帯状疱疹の患者様の診察をするような基幹病院・大学病院の医師にとってはありがたい薬剤だと思います。
ただ当院では腎機能障害の患者様が多いわけではなく、既存薬でも帯状疱疹に対しては十分対応可能なため、アメナリーフ錠の採用は「保留」としています。
今後、アメナリーフ錠のニーズが高まるようであれば、採用を検討したいと思います(本薬剤は1日1回内服のみでOKというメリットもあります。既存薬の場合は帯状疱疹に対して3〜5回の内服が必要です)。
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