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5.12018
【院内勉強会】発売間近の新規爪白癬内服薬・ネイリン
今日は昼休みの時間を利用して佐藤製薬(株)さんによる「院内勉強会 ネイリンカプセル100mg」を開催しました。
爪白癬治療のための内服薬は、1997年にラミシール錠が発売され、1999年にイトリゾールカプセル(パルス療法)が効能追加となった以降、全く進展がない分野でした。本年5月末ごろネイリンカプセルが薬価収載される予定なので、その通りに事が運べば、爪白癬治療のための新規内服薬(抗真菌剤)が約20年ぶりに登場するということになります。
本日ネイリンカプセルに関する情報を説明していただきましたが、様々な面で期待できそうな薬剤です♪ ちなみに名前の由来は「薬剤が爪(ネイル)に入る(イン)ように」ということでネイリンだそうです。
特徴としては「短い内服期間」と「食事の影響を受けない」という点が挙げられます。
まず「短い内服期間」についてですが、ネイリンカプセルは「1日1回1カプセル、12週間(3ヶ月)連続」と決められています。ただし、3ヶ月で爪が正常に戻るわけではなく、その後約9ヶ月間の経過観察が必要となります。
「爪中に大量の抗真菌剤を浸透させて白癬菌が入れない抗菌された爪を作り、その爪を伸ばして病変部分を全て押し出す」ことによって正常な爪に戻すわけです。足の爪が丸々一枚生え変わるのには、第1趾爪で1〜1年半、第2〜5趾爪で半年〜1年かかります。こう考えると、治療期間として1年間(内服期間3ヶ月+経過観察期間9ヶ月=12ヶ月)が必要であることをお分かりいただけるかと思います。
ネイリンカプセルの「1日1回1カプセル、12週間(3ヶ月)連続」という内服方法は、既存薬と比較してもメリットが大きいと思います。
ラミシール錠は「1日1回1錠、半年間(難治性の場合はそれ以上)」の服用が必要です。イトリゾールカプセルのパルス療法は「3ヶ月間(1週間内服+3週間休薬のサイクルを3回繰り返す)」ではありますが、内服する1週間は「1日8カプセル(朝4、晩4)」飲まなくてはならず、「大きなカプセルを4つ飲むのはキツイ」というお声も頂きます。
ちなみにイトリゾールカプセルの大きさは「長径18.1mm、直径6.35mm」ですが、ネイリンカプセルのそれは「長径15.6mm、直径5.8mm」とかなり小型化されています。
次は「食事の影響を受けない」という点です。ネイリンカプセルは「ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物」が経口投与後に体内で活性本体である「ラブコナゾール」に変換される「プロドラッグ」です。
【プロドラッグとは】
体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの薬。高い薬理活性をもつ化合物でも、投与した後に消化管内や肝臓で分解され、最終的に体内中の有効成分がかなり少なくなってしまう場合がある。そこで、体内あるいは目標部位に到達してから薬理活性をもつ化合物に変換され、薬理効果を発揮(活性化)するように化学的に修飾された薬がプロドラッグであり、消化管吸収性、組織移行性、組織選択性、化学的安定性などの向上を期待している。
プロドラッグ化した目的は「水溶性を高めて生物学的利用率を向上させるため」です。その結果、食事に関係なく服用できる薬剤となったのです。
既存薬はラミシール錠、イトリゾールカプセル共に「脂溶性」です。食事中の脂分が消化管内に無い状態で服用すると、脂溶性薬剤の吸収率は落ちてしまいます。服用後の最高血漿中濃度(以下、Cmax)を比較したデータが、それぞれの添付文書中にあります。食後に服用した後のCmaxを(A)、空腹時に服用した後のCmaxを(B)とすると、ラミシール錠では(A)を100としたら(B)は65、イトリゾールカプセルでは(A)を100としたら(B)は40に低下してしまいます。つまりラミシール錠では35% Down、イトリゾールカプセルではなんと60% Downです。食後と空腹時という違いだけで、ここまで薬剤の吸収率に差が出てしまうわけです。
このような性質があるため、ラミシール錠は「食後に経口投与する」となっていますし、イトリゾールカプセルにいたっては「食直後に経口投与する」と厳密に決められています。
「食事に関係なく服用できる」とはいえ、最も忘れにくいタイミングということで、ネイリンもおそらく「夕食後に内服」になるかと思われます。しかし、内服し忘れてしまっても、思い出した時点で服用できるというのは安心感がありますよね。
今後、ネイリンに関しては薬価など新しい情報が分かり次第、記事を追加していきたいと思います。
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