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8.22018
突然できた水疱は糖尿病治療薬が原因かも知れません
本日は「千葉県皮膚科医会 学術講演会 皮膚疾患Summer Seminar」に参加してきました。
お目当は特別講演「DPP-4阻害剤による薬剤性水疱性類天疱瘡の現状と対策(川崎医科大学皮膚科 教授 青山裕美先生)」でした。実はこの数ヶ月間で原因不明の水疱を主訴に来院された方が3名ほど経験したため、水疱症における新しい知見に興味がありました。
DPP-4阻害剤は糖尿病の治療薬です。調べたところ、現時点で下記の13種類が発売されています。
【DPP-4阻害薬】
ジャヌビア(シタグリプチンリン酸塩水和物)
グラクティブ(シタグリプチンリン酸塩水和物)
エクア(ビルダグリプチン)
ネシーナ(アログリプチン安息香酸塩)
トラゼンタ(リナグリプチン)
テネリア(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)
スイニー(アナグリプチン)
オングリザ(サキサグリプチン水和物)
ザファテック(トレラグリプチンコハク酸塩)
マリゼブ(オマリグリプチン)【DPP-4阻害薬配合剤】
エクメット(ビルダグリプチン+メトホルミン塩酸塩)
イニシンク(アログリプチン安息香酸塩+メトホルミン塩酸塩)
カナリア(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物+カナグリフロジン水和物)
糖尿病内科の先生方にとってこのDPP-4阻害剤は非常に使いやすい薬剤とのことで、かなり多くの糖尿病患者様が内服しているようです。DPP-4阻害剤の添付文書には以下のように「類天疱瘡を引き起こす副作用が発生する可能性がある」と書かれていますが、処方されている先生方の印象としては、このような副作用が発生する確率は非常に低いとのことでした。
【副作用】
類天疱瘡(頻度不明):類天疱瘡があらわれることがあるので、水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
類天疱瘡がどういう病気かと言いますと、皮膚や粘膜に水疱(破れるとびらんを形成)がたくさんできてしまう病気です。原因は表皮と真皮の境界となっている「基底膜」に対する自己抗体であり、この自己抗体が基底膜部に付着することによって発症します。自己抗体がなぜ作られるかは様々な誘因が考えられており、そのうちの一つが薬剤性です。
薬の副作用は発売後ある程度使用されてから初めて分かることも多々あります。今回のDPP-4阻害剤も副作用報告が蓄積され、最終的に「薬剤性水疱性類天疱瘡」という取り扱いになったものと思われます。
青山先生によると「DPP-4阻害剤による薬剤性水疱性類天疱瘡」のデータは、現在全国規模で集積中とのことでした。その前段階として自己免疫性水疱症の症例が多い4施設で集計を行っており、その結果を本日発表されていました。まだ症例数は少ないもののこれまでに分かっている範囲で、男女比、発症までの平均投与期間、特に生じやすいDPP-4阻害剤、中止後寛解の傾向とその期間、病型などを教えていただきました。
今後、クリニックでも「DPP-4阻害剤による薬剤性水疱性類天疱瘡」を診察する機会が増えると思われますので、注意深く診療を行いたいと思います。
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