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6.102020
【コレクチム軟膏】世界初! JAK阻害軟膏(チューブ口径にも工夫あり)
約2週間後の2020年6月24日(水)、ついに新規アトピー性皮膚炎治療用外用剤が発売になります! なかなか発売されないので心配していましたが、ようやく段取りが整ったようですね。先週、詳細な情報とサンプルを頂けました。
正式には「外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤」と呼ばれ、製品名が「コレクチム軟膏 0.5%(一般名:デルゴシチニブ軟膏)」です。
コレクチム軟膏の保険適用は現在のところ「アトピー性皮膚炎(成人)」に限られています。
作用機序は「細胞内JAK-STAT経路を阻害し、アトピー性皮膚炎(AD)の炎症メカニズムを途中でブロックする」というものです。ADでは様々な免疫細胞や炎症細胞がその病態に関与しており、細胞間の情報伝達にはサイトカインが機能しています。ADで重要なサイトカインはIL-4、IL-13、IL-31などです。IL-4とIL-13はデュピクセント(AD治療用注射薬)がターゲットとしているサイトカインですし、IL-31はADのかゆみに重要な役割を担っているサイトカインです。
サイトカインが細胞表面に存在する受容体に結合すると、その情報がJAK-STAT経路を介し核内に伝達され、遺伝子発現が調節されます。ADにおいてコレクチム軟膏が効果を発揮すると、下図のごとくIL-4、IL-13、IL-31などを介した情報伝達が阻害され、炎症メカニズムが途中でブロックされることによって、ADの改善につながると考えられています。
(出典:コレクチム軟膏 総合製品情報概要 P49)
当院ではデュピクセント(AD治療用注射薬)を積極的に活用しているため、多くの患者様の経過を見せていただいておりますが、体幹・四肢のADに対し劇的な効果を発揮するデュピクセントであっても、顔面の皮疹の改善が乏しい場合があります。今後はそのような患者様であっても、細胞外の受容体はデュピクセントでブロックし、さらに細胞内の情報伝達はコレクチム軟膏でブロックすることによって、顔面の状態をより一層改善できるのではないかと期待しています。
コレクチム軟膏の用法・用量、費用、および副作用(2%以上)は以下の通りです。
■1日2回塗布する(1回あたり5gまで。1日で最大10gまで)
■5gあたり698.5円(3割負担で5gあたり210円)
■副作用:毛包炎(オデキ)2.4%、ざ瘡(ニキビ)2.2%
最後に、コレクチム軟膏のチューブに施された「工夫」について解説します。コレクチム軟膏のキャップを取ると、下の写真のように軟膏が出てくる「口」の部分が大型化されています。その内径部分を測定してみると6mmあります。
この形状にした理由としては、「1FTUを正確に押し出せるようにした」とのことでした。FTUとは「Finger Tip Unit」の略で、これは「人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出すと、その量は約0.5gとなり、これは両方の手のひらに塗る量に相当する」という考え方で、現在では広く浸透しています。ちなみに顔面全体は「両方の手のひらの面積」に相当するため、1FTU(0.5g)使用するよう推奨されています。
「人差し指の先端から第一関節まで」は約2.5cmですが、その長さをチューブから押し出しても、口径が小さければ0.5gは出てきません。当然ですが。
約2.5cm出して0.5gとするためには、一般的に「口径5mmが必要」とされています。口径5mmある外用剤とは、保湿剤や尿素クリーム、および一部のニキビ治療薬などであり、それらは15g以上の容量を有するチューブです。
試しに、コレクチム軟膏と同じく鳥居薬品(株)から販売されているアンテベート軟膏&クリームを並べてみました。
この角度から見ると一目瞭然ですよね。コレクチム軟膏の内径は6mmですが、ここに穴を開けると実際の大きさは5mm程度になりました。コレクチム軟膏はキャップ側にも工夫が見られ、チューブに穴を開けるための棘状の突起物が太くなっています。ここが細いと大きな穴は開けられません。
アンテベートはそれぞれ内径4mmなので、どう頑張っても5mmにはならないですよね。当院は院内処方のため外用剤チューブを一通り見て見ましたが、10gチューブには内径6mmの製品もありましたが、キャップ側の突起物が細いものばかりでした。5gチューブには内径6mmの製品自体がありませんでした。
FTUという概念を患者様が理解され、またより実践しやすいように、今後はコレクチム軟膏以外の外用剤も口径部分について製品改良して頂けると有難いですね。
コレクチム軟膏につきましては、当院では7月からの処方開始を予定しています。どうぞよろしくお願いします。
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