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海外で始めたデュピクセントの国内継続は可能?-①



患者様よりお問い合わせを頂きました。

現在シンガポールに居住しており、現地の病院でデュピクセントでの治療を受けています。

今月に一時帰国し、しばらくの間日本で過ごすのですが、現在の主治医に日本でも必ず2週間に一度デュピクセントの治療を受けるようにと言われ、治療を受けられる病院を探していたところ、貴院に辿り着きました。

別の病院で相談したところ治療を受けるにはIGA/EASI Scoreと病変面積のデータを出すようにと言われたのですが、シンガポールでは治療の体制が異なりこれらのデータがありません。

そのような状況でも貴院で治療を受けることは可能でしょうか。アドバイスいただけますと幸いです。

よろしくお願いします。

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせいただきありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「シンガポールで受けているデュピクセント治療の日本国内での加療継続」について回答いたします。

加療継続において、選択肢を実現容易な順に提示させていただきます。

(1)シンガポールの病院から日本滞在中に必要な量のデュピクセントを処方していただく
日本におけるデュピクセント治療は、基本的に患者様による自己注射となっています。シンガポールでも同様であれば、長期処方を行っていただき、2週間に一度ご自身で注射をしていただくのが宜しいかと存じます。
これが最も容易と考えられますが、恐らくこの方法が難しいため今回ご相談いただいた可能性が高いのだと思われますので、下記2点もご覧ください。

(2)日本国内ではデュピクセント治療を自費診療としてお受けいただく
保険診療によるデュピクセント治療は、後述のごとく、様々な面において非常にハードルが高いものとなっています。仮に、〇〇様が日本の健康保険証をお持ちでない場合、自費診療でお受け頂くこととなりますので、複雑な制約なしに治療可能となります。また、健康保険証をお持ちであっても、自費診療を選択することも可能です。

(3)保険診療にてデュピクセント治療をお受け頂く
日本国内においては、アトピー性皮膚炎(以下、AD)に対してデュピクセント治療を始めるにあたり、下記情報をすべてレセプトに記載する必要があります。
A:施設要件(治療に携わる医師が、一定期間皮膚科診療、アレルギー診療の臨床研修などを行っていること)
B:前治療要件(ガイドラインに準じた外用療法を6ヶ月以上行っていること)
C:疾患活動性の状況を数値で記載(IGAスコア、EASIスコア、体表面積における病変の割合(%))

つまり、一般的な流れとしましては、非常に重症なAD患者様の状態を医師が自分自身の目で確認し、それを数値化し、ある一定の数値をクリアする方だけがデュピクセントの対象となります。〇〇様の場合で最も難しいのが、「既にデュピクセント治療を受けているため、ADは落ち着いた状態となっており、病状を数値化した際(上記C)に基準をクリアできない可能性が高い」という点となります。他院でこの数値の提出を求められたのには、このような事情が含まれています。

当院では発売当初から2年半ほどデュピクセントを取り扱い、発売元であるサノフィ(株)の担当者とは何度も意見・情報交換を行っていますが、「海外で治療を受けられている患者様における日本国内での加療継続」について情報を頂いたことがなく、そのようなケースを想定したルールが定められていないのかもしれません。もしくは、「上記Cの記載を免除する」というルールがあるのかもしれません。今回の件につきましては、サノフィ(株)へ早急に問い合わせをしてみます(年末年始を挟むため、回答を得るには長い時間を要する可能性があります)。

帰国のご都合上、どうしてもデュピクセントが保険診療にて必要な場合、可能な限り対応させていただきたいと考えていますが、「レセプト審査で当該治療が認められなかった際には自費診療として費用を支払います」という旨の同意書を事前に頂くことにはなります。

現在、入国の際には「2週間の自己隔離」が必要となっていますし、当院としましても自己隔離完了後にご来院いただきたいと考えております。デュピクセントの注射サイクルの件もありますので、可能な限り、ギリギリまでシンガポールで治療をお受けいただきたいと思います。

回答は以上となります。
ご検討ください。

どうぞよろしくお願いします。

■追記(2021.01.17):
海外で始めたデュピクセントの国内継続は可能?-②」も公開しましたので、こちらもご覧下さい。



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