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陰嚢被角血管腫の治療後に血栓ができて問題となりますか?



患者様よりお問い合わせを頂きました。

陰嚢被角血管腫の治療でレーザー治療(ロングパルスYAGレーザー)で血栓や動脈硬化に関する副作用が心配です。

39歳男で高脂血症と糖尿病(寛解中)と頸動脈プラーク1.8ミリあります。

血管の治療だと思うのですが、副作用で血栓などが発生しないか心配です。

問題ないでしょうか?

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「血管に対するレーザー治療に伴う血栓形成」について回答いたします。

まず結論から申し上げますと、血管系疾患に対するレーザー治療後に血栓を形成し、健康被害を生じてしまうリスクはほぼありません。

以下、順に説明いたします。

血管系疾患に対して用いられるレーザーの波長は、595nm(ダイレーザー)、および1064nm(Nd-YAGレーザー)です。両者とも赤血球内のヘモグロビンに吸収される性質があり、結果的にレーザーエネルギーが熱エネルギーに変換され、その熱によって血管が蛋白変性を生じ破壊されます。治療前に比べ血管の数が減ると、赤〜紫色だった皮膚の色調が改善します。

理論的には前述のごとくなのですが、実際生体に照射した場合、照射部位に存在する全ての血管が1回のレーザー照射で蛋白変性を起こして消失するわけではありません。完全に蛋白変性を生じる血管あり、部分的な変性のみで血管としての構造が残存する血管あり、ということです。疾患によっては同じ部位に対して複数回の治療が必要となるのは、このような理由があるからです。

不完全に破壊されたダメージを受けた血管は、破れて出血します。人体には血管の破れを塞ぎ、血を止める働き(凝固系機能)があります。具体的には血小板とフィブリンによる血栓を作り出血を抑えます。その後血管を構成している細胞(内皮細胞)が血栓を押し除けるように増殖し、血管の綻びが修復されます。修復後は血栓が不要となるため、血栓を除去する働きが起こります(線溶系機能)。血中のプラスミンという物質が血栓を溶かし始め、単球やマクロファージが掃除をするように飲み込んで血栓が除去されます。

このように正常な凝固・線溶系機能を有している方の場合、必要時に血栓が形成されたとしても、不要になれば除去されます。

以上のような理由から、実際の医療現場において、血管系疾患に対するレーザー治療の副作用として血栓形成は心配されていません。

別の側面から考えますと、レーザー治療を受ける程度の面積と同等の広さに擦過傷や挫傷を生じても、通常血栓の心配をしないと思います。出血をすれば、損傷した血管部分を塞ぐために微細な血栓は多数形成されているにもかかわらずです。

動脈硬化につきましても、血管系疾患に対するレーザー治療後に悪化するということはないと考えています。レーザー治療の影響は、あくまでもレーザーを照射した部分にのみ生じるとお考えください。

陰嚢被角血管腫に対するロングパルスYAGレーザー治療のご希望がございましたら、ぜひ一度ご来院ください。

回答は以上となります。
ご検討ください。

なお、今後の来院・受付に関する事務的なご質問は、下記までお電話にてお問い合わせください。
Tel:043-423-3552

どうぞ宜しくお願いします。



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