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アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ適否と他の対策について



患者様よりお問い合わせを頂きました。

お世話になります。初診受診希望の○○と申します。41歳、男性、職業は現場監督です。

私は幼少期からずっとアトピー、喘息、鼻炎を患っており41歳になった今でも症状と向き合って生活しています。約10年前はIgE抗体は1500程度ありましたが、自費でのIgG検査に基づく食生活や香料、化学物質の吸引や洗剤を無添加のものにするなど徹底的な対策を行い、現在はIGEが600程度と落ち着いてきました。ですが上記の対策を行わないと、一気に悪化して社会人として生活ができなくなるほどです。しかしながらこれらの対策を続けて、通常の治療(タリオン、キプレス、プロトピック軟膏、アンテベート軟膏、アンテベートローション使用)を行えば、ぱっと見はどこがアトピーなんだ?と言われるくらい軽症に見られるようです。

私としては皮膚の痒みや固さ、乾燥やごわつきで夜寝れず、眠剤を飲んで寝ても途中でかゆみや皮膚の不快感で起きてしまいます。乾燥やごわつきに敏感肌用のクリーム等を塗ってもそのクリームにかぶれてしまう始末です。

上記に記載しましたが香料、化学物質等をできる限り吸引、摂取しないように生活しているため、通常の生活や仕事に支障が出てしまうのが現状です。また、先日胃腸内科にかかり、機能性ディスペプシアの疑いとされ薬を処方されて、服用しましたが、処方されたどの胃腸薬を飲んでも薬に対してアレルギーが出て、症状が悪化してしまい、機能性ディスペプシアの治療ができない状態であります。

話が変わりますが、数年前に転勤で山口県勤務していたころ、若い開業医さんがデュピルマブを保険適用で打って下さり、これまでにない感覚がありました。もしかしたらデュピルマブでの治療を行えば、香料、化学物質を気にせず生活できたり、機能性ディスペプシアの治療もできるようになるのではと期待しています。

以上の私の現状をかんがみてデュピルマブもしくは抗ヒスタミン薬以外の治療をしていただけませんでしょうか?

【追記】現状の服薬状況ですが、アレロック、ジルテック、ルパフィン、タリオン=日中は眠気と戦っている。 アレグラ、ディラグラ、クラリチン=全く効かない。そのためタリオンを仕方なく飲んでいる状況でもあります。

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「アトピー性皮膚炎に対するデュピルマブ(デュピクセント)の適否」について回答いたします。

アトピー性皮膚炎の諸症状により日常生活に支障が出ている現状につき、ご教示いただきありがとうございました。詳しく説明していただいたことで、私自身もよく理解できたと考えています。

アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤は、デュピルマブの登場から始まり、現状4種類あります。2024年11月現在、■が当院採用品目、□が未採用品目です。

■デュピクセント(デュピルマブ):IL-4、IL-13がターゲット
■アドトラーザ(トラロキヌマブ):IL-13がターゲット
□イブグリース(レブリキズマブ):IL-13がターゲット
■ミチーガ(ネモリズマブ):IL-31がターゲット

それぞれ適用条件が異なりますが、全てに共通しているのがEASIスコアです。EASIスコアは皮膚症状を数値化する評価方法です。デュピクセント、アドトラーザ、イブグリースの適用条件が本スコア16以上、ミチーガのそれが10以上となっています。

EASIスコアは医師が客観的に皮膚症状の重要度を評価するための良い手法なのですが、皮膚症状を外観から評価していくものなので、患者様が感じている「かゆみ」が評価項目に入っていません。そのため質問文中の「ぱっと見はどこがアトピーなんだ?と言われるくらい軽症に見られるようです」という状態ですと、EASIスコアが規定値に達しない可能性があります。

その場合の対応策として、以下の2点を考えました。

(1)以前デュピクセントの治療を受けた医療機関にお問い合わせしていただき、開始時のスコアを教えていただくことができれば、本院での治療は「継続扱い」となります。必要なスコアは「IGAスコア」、「EASIスコア」、「病変面積」の3点です。デュピクセントの適用条件を満たした数値があるはずですので、その数値をレセプトに記載すれば当院でのデュピクセントは使用可能になります。

(2)仮にデュピクセントの適用が難しい場合、ミチーガを検討すると良いかもしれません。ミチーガは痒みの原因となっているIL-31を抑制する製品で、痒みが強い患者様の場合、デュピクセントよりも高い効果を発揮する可能性があります。また、適用条件としてのEASIスコアのハードルが低く、また「かゆみをスコア化した数値」も評価項目に入ってくるため、「皮膚外観はひどく見えないけれども、ご本人は強いかゆみを感じている」という患者様に適しています。

現在はアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤のラインナップが豊富にあり、10年前の治療に比べて飛躍的に進歩しました。〇〇様にとって最適な生物学的製剤を選択し、日常生活への支障を可能な限り抑えたいと考えています。

治療のご希望がございましたら、ぜひ一度ご来院ください。

回答は以上となります。
ご検討ください。

なお、今後の来院・受付に関する事務的なご質問は、下記までお電話にてお問い合わせください。
Tel:043-423-3552

どうぞ宜しくお願いします。



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