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ニキビの原因・成り立ち、及び治療戦略の詳細について



患者様よりお問い合わせを頂きました。

中3息子のニキビについてです。

ニキビが背中や頭皮に広がり始めたのは3~4年前で、皮膚科は何ヶ所か回ったけど改善されず・・・

ニキビからケロイドになっていて、ニキビにはビタミンCをイオン導入したら炎症が治まってきたけど、ケロイドは減っていません。

年齢的なものだったり、長期的に様子見て治療しなくちゃいけないものなのだとは思うのですが、多発している胸・背中のケロイドのため、プールや温泉も本人が気にして行けなくてかわいそうに思っています。

何かアドバイスがありませんでしょうか?

もらっている薬は以下の通りです。
・ビブラマイシン100mg 1錠/日x14日
・荊芥連翹湯エキス顆粒 7.5g/日x28日
・デュアック配合ゲル10g
・ヘパリン類似物質ローション50g
・エクラープラスター 3枚

当院からの返信です。

〇〇様

お問い合わせありがとうございます。
松島皮膚科医院の松島弘典です。

ご質問の「ニキビの原因・成り立ち、及び治療戦略」について回答いたします。

ニキビの根本的な原因は第二次性徴に伴う「男性ホルモンの分泌増強」になります。その影響により下記のような流れで病気が作られていきます。

(1)第二次性徴に伴う男性ホルモンの分泌増強
(2)上記作用による「皮脂分泌の亢進」、「毛包漏斗部(毛穴の出入口)の角質増殖(いわゆる角栓)」
(3)(2)の作用による毛包(毛を包む組織)内の皮脂充満→面皰形成(白ニキビ、黒ニキビ)
(4)毛包内でのアクネ菌増殖(皮脂が多い環境で増殖します)に伴う炎症→赤ニキビ
(5)赤ニキビが悪化して膿が貯まる場合もあります→黄ニキビ
(6)ニキビの炎症後に生じる一時的な後遺症(自然消退までの期間):炎症後紅斑(約6ヶ月)、炎症後色素沈着(3〜6ヶ月)
(7)ニキビの炎症後に生じる永続的な後遺症(自然に改善することが期待できない):陥凹性瘢痕(クレーター状の凹み)、ケロイド(周囲の正常な皮膚面より隆起した傷痕)

ニキビでお悩みの患者様は「赤ニキビをなくしたい」という希望の方が大多数です。もちろんそのお気持ちは理解しながら治療にあたっているのですが、医療者側としてはより未来を心配しており、とにかく「永続的な後遺症を残さないために現在の治療を頑張ってもらいたい」と考えています。

永続的な後遺症は「皮膚の組織構造の破壊が大きい場合」、および「ダメージの修復が正常に行われなかった場合」に生じます。前述の陥凹性瘢痕は皮膚の真皮深部のダメージが大きく、正常な皮膚の厚みにまで再生できなかった場合に生じます。ケロイドは回復期における真皮の過剰な線維形成により生じます。

拝見したお写真、および主治医の処方内容より、胸部には複数のケロイドを形成していると考えられます。分類としては重症なニキビということになりますので、将来的なことを考えると、「生活の中で皮膚科通院・ニキビ治療の優先順位を上げる」、「病気が悪化する隙を作らない継続的な治療(現在15歳なので当面の目標としては20歳まで)」が必要です。

次に治療に関して説明いたします。保険診療と自費診療があります。

ニキビに対する保険診療は近年長足の進歩を遂げました。約16年前より世界の標準的な外用治療薬が日本の保険診療で使えるようになったからです。

■主成分が過酸化ベンゾイル(BPO)の製品【適応は「顔面」、「胸部・背部」】
・デュアックゲル
・ベピオゲル
・ベピオローション

■主成分がアダパレンの製品【適応は「顔面」】
・ディフェリンゲル

■主成分がBPO+アダパレンの製品【適応は「顔面」】
・エピデュオゲル

これらの外用剤は赤ニキビ、黄ニキビに対して有効なだけでなく、ニキビの初期症状である面皰にも効果を発揮する点が画期的です。それ以前の日本の保険診療では、面皰に対して有効な薬剤がほとんどありませんでした。

面皰改善・抑制効果がどのように画期的かと申しますと、「面皰が消失すると赤ニキビ・黄ニキビができないため長期的な予防効果が得られる」という点になります。簡単に表現すると「ニキビが出ない肌質に改善可能」ということです。目に見えない、自覚できない作用なため、患者様には最もご理解いただきにくい効果なのですが、医療者側としてはこの作用こそ最重要と考えています。

このような薬剤の作用特性を最大限活用するためには、「ニキビが出る範囲全てに面で塗る(赤ニキビにしか外用していない患者様が多いです)」、「欠かさず毎日塗る」ことを続けなくてはなりません。

「面で塗る」とは顔面のニキビであれば、「顔面全体に塗る」ということです。胸部、背部も同様です。ニキビが出る範囲を「長期的にニキビが出ない肌質に変える」ために外用するわけですから、塗り残しがあったらその目的は達成できません。

「欠かさず毎日塗る」もご理解いただけるかと思いますが、男性ホルモンの作用(=ニキビを作り、悪化させる作用)は毎日顔面、胸部、背部にかかり続けています。それは避けることができません。しかし、その作用が皮膚に悪影響を及ぼさないようにさせることができれば、ニキビは新たに発生せず悪化しません。そのような肌質改善を行い、維持するためには、毎日の外用が必須となります。

処方箋を拝見すると「デュアックゲル10g」と少量のみ処方されています。体に使用できる薬剤としては最も強力なものになりますので、薬剤の種類はいいと思いますが、面塗りするにはかなりの量の外用剤が必要なため、処方量を増やしていただいた方がいいと思います。

治療戦略として日本皮膚科学会からもニキビに対する治療ガイドラインが発行されています。そのガイドラインにおいても「治療の基本が外用」→「効果不十分であれば内服併用」→「それでも難治性であればその他の治療併用」となっています。

内服薬としては抗生剤、ビタミン剤、漢方薬が一般的ですが、ニキビは内服薬だけでコントロールすることが難しい疾患なため、あくまでも「外用剤が主役」です。外用剤を正しく使用しているにもかかわらず治療がうまくいかない場合に用いる補助療法としてお考えください。

ニキビに伴うケロイドは、真下に骨がある部分に好発するため、部位としてはフェイスライン、胸の中央部分、肩〜肩甲骨部分に生じます。ケロイドは基本的に治療が難しい症状で、改善には長期間(数ヶ月〜数年)、複数回の治療を要します。

保険診療におけるケロイド治療としては、「内服薬(リザベンカプセル)」、「ステロイド貼付薬(エクラープラスター)」、「ステロイド局所注射薬(ケナコルトA)」などがあります。

特にステロイド系薬剤は効果が高いですが、「ニキビ自体の悪化(免疫抑制効果のため)」、「赤みの増強(毛細血管拡張のため)」、「皮膚の凹み(真皮・脂肪組織の菲薄化のため)」といった副作用もあるため、注意しながら使用する必要があります。

当院では主に「ニキビ自体の悪化」を懸念し、ニキビに伴うケロイドに対してはステロイド系薬剤を使用せず、レーザー治療を主として治療しています(自費診療)。ケロイド治療が思うようにいかない場合、レーザー治療を検討されても良いかもしれません(当院の使用機種は下記となります)。
・ダイレーザー(機種:Vbeam II)
・ロングパルスYAGレーザー(機種:GentleMax Pro)

最後に最重症の患者様向けの治療についてご紹介します(当院では未採用です)。

治療効果が非常に高い内服薬に「イソトレチノイン」があります。自費診療となり、副作用も多い薬剤ですが、「皮脂腺を縮小させて皮脂分泌を減らし、ニキビを生じにくい皮膚に変える働き」がとても強力です。

今後保険診療をしっかり行ってもニキビ治療が思うようにいかない場合、イソトレチノインを検討してもいいかもしれません。

回答は以上となります。
ご検討ください。

なお、今後の来院・受付に関する事務的なご質問は、下記までお電話にてお問い合わせください。
Tel:043-423-3552

どうぞ宜しくお願いします。



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